ゲームの処方箋 5年の歩み
ビデオゲームが人間に与える効能を明らかにし、その活用方法を研究することによって、ゲームの未知の可能性を探り、人とゲームの新しい関 係を考える――「ゲームの処方箋プロジェクト」が始まってちょうど5年。
プロジェクトは(株)ナムコの50周年記念事業の 一環として、早稲田大学こどもメディア研究所、(財) ニューテクノロジー振興財団と連携して発足。人間工学、認知科学、発達心理学などの各分野から研究者を招聘し、アプローチの多様化を図りました。その研究内容は、ゲームの特性やプレイヤーの行動、心理の分析・調査にとどまらず、その知見を応用したオリジナルのゲームソフトの開発にまで及んでいます。
5年間のプロジェクトの成果を振り返り、 そしてゲームの未来を考えます。
ゲームと私 養老孟司
ブルボン小林(コラムニスト) 高橋愛(モーニング娘。)
牛窪恵(マーケティングライター) 加藤夏希(モデル、女優)
第一期 第二期 第三期 第四期 第五期 座談会 学会論文リスト
第一期 2005年6月〜2006年3月
プロジェクトは以下の4人の研究者が中心となり、四つの研究テーマでスタートしました。
●河合隆史氏:早稲田大学大学院国際情報通信研究科助教授
●渡邊克巳氏:東京大学先端科学技術研究センター助教授
●宮尾益知氏:国立成育医療センター 発達心理科医長
●二瓶健次氏:東京西徳洲会病院小児センター 小児難病センター部長

1)心理的効果を中心としたゲームソフトの効能の調査

ゲームの影響として、まず短時間のプレーによる気分の変化に着目、ソフトごとの傾向や習熟度による差異などを比較・検討しました。携帯ゲーム機用の5種類のソフトを用い、プレー中・プレー前後の若年者の生理・心理反応を測定・解析。気分の高揚や疲労の低減、ストレス低下など、ソフトごとに異なる影響が見られました。その応用から、ソフトごとにゲームの特性を記し、習熟度や嗜好に応じてゲームを選べる「処方箋」の可能性も示されました。

皮膚電位計を用いた生理変化の計測
◎皮膚電位計を用いた生理変化の計測

2)ビデオゲームのインタラクションの評価方法の研究

ゲーム開発者は、ゲームバランスの調整に試行錯誤を繰り返し、多くの傑作を生み出してきましたが、一方でそれが開発者の感性や技能に委ねられ、定量化や分析がなされてこなかったという問題があります。本テーマでは、プレー中の視覚的な注意やインタラクションに着目。カスタマイズ可能な『パックマン』の有効視野やプレースピードなどのパラメータを変化させて、心理物理的測定を行い、『パックマン』の優れたゲームバランスを実証。ゲームの「面白さ」の客観的評価に取り組みました。

視野制限法を用いたゲームプレー 中の有効視野測定
◎視野制限法を用いたゲームプレー 中の有効視野測定

3)発達障害児を対象とした臨床現場での処方の仕方の検討

軽度発達障害児は、知的な遅れがなく、特定の能力に障害がある子供。興味あることには優れた能力を発揮することが多いため、最近では遊びを取り入れた支援方法が注目されています。障害別にゲームソフトの嗜好や遊び方について分析を行い、ソーシャルスキルアップなどの支援方法の可能性を検討しました。

4)遊びの要素に注目した学習障害児支援用ソフトの制作

軽度発達障害児の中でも、読み書き困難を示す発達性難読症(ディスレキシア)を対象とした学習支援システムを提案。立体ディスプレイを用いた空間的な表現により、文字の構造理解を支援するソフトを試作、評価結果からも有効性が示唆されました。
立体ディスプレイを用いた識字学習支援システム
◎立体ディスプレイを用いた識字学習支援システム


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2006年7月には「ゲームの処方箋」シンポジウムを開催、プロジェクト参加者による成果の発表報告、意見交換が行われました。

「ゲームの処方箋」シンポジウム
  2006年7月14日 秋葉原UDXビル4F アキバ3Dシアター


第1部 研究成果発表

1)心理的効果を中心としたゲームソフトの効能の調査:河合隆史
2)ビデオゲームのインタラクションの評価手法の研究:渡邊克巳
3)発達障害児を対象とした臨床現場での処方の仕方の検討:宮尾益知
4)遊びの要素に着目した立体ディスプレイを用いた学習障害児支援用ソフトの制作:宮尾益知


第2部 パネルディスカッション

     司会:坂井滋和(早稲田大学こどもメディア研究所所長)
     パネリスト:馬場章(東京大学大学院情報学環教授、日本デジタ
     ルゲーム学会会長)
     山下柚実(ノンフィクション作家、五感生活研究所代表)
     小糸正樹(経済産業省 商務情報政策局 文化情報関連産業課課長)
     二瓶健次
     河合隆史

◎パネルディスカッション
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報告書の公開は準備中です。
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