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三月兎さんによる大会レポート(マイクロクリッパー競技編)


マイクロクリッパー競技レポート

有終の美を飾ったのは、Accelerator(SHI YANG氏)


マイクロクリッパー競技には、国内外から12台のエントリーがあった。本競技種目は、当初の目的を達成したとの判断から、今大会をもって最終開催となった。

【画像1】第32回マイクロマウス全日本大会 マイクロクリッパー競技


マイクロクリッパー競技は、アーム機構を搭載した自律ロボットが、通路上にある円筒を発見して反転しながら、未知の迷路内を探索走行し、迷路内にある全ての円筒を反転した後に、スタート地点へ戻ってくるまでのタイムを競う。
今年の迷路は、画像2だ。まっすぐ4個並んだ円筒や、ナナメに配置された円筒をいかに効率よく反転させるかがポイントとなった。

【画像2・3】32個の円筒が配置された迷路


今年は1位~3位をNgee Ann Polytechnicのマイクロクリッパーが独占した。上位ロボットがどのように攻略していたのか、動画で紹介しよう。

優勝したAccelerator(SHI YANG氏/Ngee Ann Polytechnic NP-505)と2位の「TANKER(Chen Xingze氏/Ngee Ann Polytechnic ece-505)」は、共同開発したロボットだ。

SHI YANG氏がソフトウェア、Chen Xingze氏がハードウェアを担当して、去年優勝マシンのTANKERを改良したのがAcceleratorだ。Acceleratorは、TANKERを小型軽量化しプログラムの作り込みで、昨年よりもスピードアップしたという。

したがって、この2つのロボットの動きはよく似ている。

2位に入賞したTANKER(Chen Xingze氏/Ngee Ann Polytechnic ece-505)の動きは俯瞰で撮影した。階段状部分に配置された円筒を外側から発見して、その場に反転させている。このようなやり方ならば、ロボットの進行方向を妨げない。

    

【動画】2位入賞のTANKER。ナナメ部分の攻略。TANKERは30個の反転に成功した。


続いて優勝したAccelerator(SHI YANG氏/Ngee Ann Polytechnic NP-505)の動画を見てみよう。
TANKERと同じように、階段状の一辺にある円筒を外側から反転した後に、反対側の階段状の中を移動し、円筒を持ち上げると一区画前進し背後に円筒を下ろしている。階段出口の円筒は、既に反転済であることを記憶しており、円筒を離す前にアームを回転させて再反転による失点を防いでいる。

そして、横並びの円筒も壁越しに発見して反転している。

Acceleratorは、この後、順調に迷路内にある円筒を反転して回っていた。無事に31個目も反転し、いよいよ残すところあと1個となった。しかし、袋小路から抜けるためにその31個目を再反転しようとして、失敗。円筒はバランスを崩して倒れてしまった。その瞬間、会場から「あぁ~」とため息が漏れた。

しかし、その後は安定した動きを見せ、階段状の置くにある最後の円筒を無事に発見。迷路内を全探索してから、スタート地点へ戻った。

    

【動画】31個を反転して優勝したAccelerator。一度反転した円筒は再反転しないプログラムになっている。


    

【動画】Acceleratorは、再反転の際に1個だけ倒してしまったが、残りは全て成功。無事にスタート地点まで戻ってきた。


【画像4】Accelerator(上)とTANKER(下)。Acceleratorの方がボディが小さくアームも細くなっているのがわかる

【画像5】優勝したSHI YANG氏(青いトレーナー)がソフトウェア、2位のChen Xingze氏がハードを担当した


【画像6・7】ボディを軽量化したので、円筒を持ち上げる時にバランスを取るのが難しくなったそうだ


NGEE ANN POLYTECHNICからは、この2台を含め全部で5台のマイクロクリッパーが出場していた。ロボットを初めて間もない学生が、マイクロマウス競技で勝つのは難しい。そこでのため、モチベーションが続かない。そのため、上位入賞を狙いやすいクリッパーを作る学生が多いそうだ。
以前は、同校の全マシンが機体構成もソフトも共通していた。しかし、今年は3位のRangerや、6位のVINSが優勝マシンとは違う動きをしていて、各自でロボット開発をしている様子がうかがえた。

    

【動画】3位入賞のRanger(Lau Yew Kai氏,Guo Jun氏/Ngee Ann Polytechnic NP-506)は29個を反転させた。


    

【動画】Rangerの迷路攻略は、Acceleratorと違うロジックになっているのがわかる。


    

【動画】VINS(Kyaw Htet Aung氏/Ngee Ann Polytechnic)は、4つ並んでいる円筒を上手に発見できずにいた。


【画像8】3位入賞のRanger(Lau Yew Kai氏,Guo Jun氏/Ngee Ann Polytechnic NP-506)

【画像9】VINS(Kyaw Htet Aung氏/Ngee Ann Polytechnic)


日本人でトップは、14個反転させて4位入賞した「ヌクヌクDASH Alter(青木政武氏/山中湖ロボットクラブ)」だ。
ヌクヌクDASH Alterの動きを俯瞰で見ると、迷路を曲がった時に姿勢が崩れているにもかかわらず、円筒をしっかりと把持しているのがわかる。しかし、反転する際に円筒を置く位置が微妙に通路の中央からズレてしまい、再反転したい円筒の把持に失敗してしまうことがあり残念だった。

    

【動画】4位の「ヌクヌクDASH Alter(青木政武氏/山中湖ロボットクラブ)」。高く持ち上げた円筒を力強く反転している。


そして、5位に「たかしくん(江嵜竜臣氏/山中湖ロボットクラブ)」が続いた。

    

【動画】「たかしくん(江嵜竜臣氏/山中湖ロボットクラブ)」は11個を反転した。たかしくんのアームは左右で長さが違う。


マイクロクリッパー競技は、1992年の3月に実行委員会で提案され、同年11月に開催された第13回全日本マイクロマウスtaikaiから実施された。ロボコンマガジンNo.15(オーム社)の記事によると、初開催時はエントリーが2台、優秀賞を受賞した「MW-1」が3個の円筒を返したそうだ。

この競技は、単に迷路を探索するだけではなく、円筒を反転するたびに状況は刻々と変化する。こうした環境の中で、ロボットがどのような自律的プランニングで、目的を達成するか? という課題として、提案された。

「大変興味深いテーマであり、様々なケースがあるため、完全な答えはまだ見つかってはいない」と油田委員長は講評で述べた。しかしながら、競技スタートから20年が経過し、アルゴリズムもある程度、飽和し、競技の役割は一旦、ここで終了する時期であると委員会は判断したという。

これまで様々なアルゴリズムで競技にトライしてきたヌクヌクDASH Alterの青木政武氏(山中湖ロボットクラブ)に、特別賞が贈られた。

【画像10】青木政武氏(山中湖ロボットクラブ)


■競技風景


【画像11】2011年出場マイクロクリッパー

【画像12】スタートの緊張する瞬間


【画像13・14】しっかりと持ち上げて、慎重に下ろす


【画像15】円滑な競技進行のために、ゲージを用いて円筒を通路の中央に正確に配置する

【画像16】時には、エア缶をつかもうとしてしまうこともある


【画像17・18】正統派クリッパーや、ユニークな二足歩行クリッパー「G-R(岩崎慎也氏/日本工業大学)もいた


■ロボット工作教室・企業展示風景


【画像19・20】ロボット工作教室風景


【画像21・22】ロボット工作教室風景


【画像23・24】株式会社アールティのねこ店長は子どもたちの人気者


【画像25・26】企業展示ブース