マイクロマウスは小さくとも技術と国際交流には大きな未来
事務局の中川です。アドベントカレンダーを書くことにしたので、国際大会について書いてみようと思います。
マイクロマウスでも有志でアドベントカレンダーが開催されています。ぜひ他の記事も読んでみてください。(アドベントカレンダーとは年末、クリスマスまでに1日ごとにカレンダーをくりぬくことから始まってるみたいですが、IT界隈ではブログを書いてリレーすることが多いです。)
https://adventar.org/calendars/9933
マイクロマウスとは?
マイクロマウスを知らない方のために簡単に説明すると、マイクロマウスは、小型ロボットが迷路を自律的に探索し、最速でゴールすることを競う競技です。我々は個人で開発しうるロボット技術の集大成であるとおもっていますし、実際に日本では学生から社会人まで多くの人々が挑戦しています。
マイクロマウスを知っている人は、1970年代後半から大会が開催されていることはご承知のとおりです。
当時から世界各地で開催されましたが、海外では廃れたり、新しく開催されたりと規模や歴史はそれぞれです。そして、日本のように地区大会が開かれたり、全日本マイクロマウス大会のように大きな規模ではありません。実は、日本の大会が毎年大会が開かれ、コミュニティも大きく、開発キットや情報なども充実しており、世界で一番規模が大きな大会です。そのため、海外からも日本の大会に来たい、という話が多くあり、逆に日本のチャンピオン達を招待したいという話もあります。
今回は、海外大会についてちらっとご紹介しましょう。
海外大会と日本の大会の共通点や違い
全日本マイクロマウス大会では、アメリカ、英国、台湾、シンガポール、チリといった国々から招待選手を招いています。参加している方々は、新しい人もいますが、古くから国際交流をしている方が多いのはご承知のとおりです。
逆に日本からも米国APEC大会や台湾、中国等から招待選手が行くこともあります。
そして、迷路は同じでも、国によって少しずつルールが違う、というのは参加した選手しか知らないかもしれません。
日本では、5分 or 7分以内、5回以内という時間内に走りきるタイムアタック競技としてマイクロマウスがあります。また、オートスタートなどの知能を競う評価等もあるのは参加者の皆さんはご承知の通りです。しかし、APEC大会や台湾大会では1回目の探索と2回目の走行をノータッチで行けることを基本として、タイムを評価します。台湾大会では、1回目の探索時間も加味した賢さを評価したタイム計算方法になっていてちょっと複雑です。それはそれでまた面白いチャレンジです。
そして全世界的に見て、これはマイクロマウスの特徴だな、と私が思っていることがあります。
それは、意外とマイクロマウス以外のロボット競技は学生のうちだけやっているという人も多く、卒業するといなくなることが多いということです。ある意味、生涯を通じて技術を高めていける生涯学習的にやれる大会はマイクロマウスならではないでしょうか。これは世界各地とも同じ傾向です。
実は、マイクロマウスの大会では参加者同士がレスペクトしあえるよう、相手はライバルではなくともに称えあう切磋琢磨する意味を込めて、あえて、競技、競い合う意味のコンペティションではなく「コンテスト」と呼んでいます。海外でも、Micromouse contestと言います。ここは参加者の皆さんにオープンマインドで技術交流していただけるようNTFもこだわっているところでもあります。
マイクロマウス大会で日本が海外と大きく違うのはサイズでしょうか。
マイクロマウスのサイズです。日本ではいわゆる「ハーフサイズ」がマイクロマウスですが、海外ではクラシックサイズが「マイクロマウス」です。競技人口の多さや技術に対する関心の高さ、ブログなどの情報公開があるからこそできることだと思っています。
私が見てきたり、表敬訪問いただいたりして知った海外大会の様子をちらっとご紹介
海外大会の中では、台湾大会が一番規模が大きく、競技も豊富です。
個人的にはトレースと迷路を組み合わせた競技が見てて楽しかったです。
(参加当時、写真撮ったはずなのですがちょっと見つからず。ごめんなさい。多分あとでどなたかくれるでしょうw)
中国天津の大会は規模が大きいが、ロボトレース競技がありません。
見学者にマウスを見せる松井さんと宇都宮さん
天津大会の様子
大会の様子や中国天津の様子をアルバムでご覧ください。https://photos.app.goo.gl/rccX9yq6Q1xMVPuf9
米国APEC(エイペック)はIEEE(アイトリプルイー)の学会の企業展示の一部として開催されるため、観客が多いのが特徴です。
第1回のIEEEのマイクロマウス大会に出場したと話してくれたBrianさんとAPEC2024にて
APECの認定証
APECの大会の様子はこちらでご覧ください。https://photos.app.goo.gl/XfwJ6QXsAxcjKeHF8
エクアドルは今年始まりました。IEEEのイベントの一環として開催され、まだまだ規模はちいさく、迷路も5×5といった黎明期です。
エクアドルの大会レポートはこちらに書いたのでぜひご覧ください。
https://www.ntf.or.jp/?p=1363
私は行ったことはありませんが、他にも、英国、スペイン、ポルトガル、インドなどでも開催されています。
チリは、日本のルールに準拠して、昨年度から始まりましたが、ロボトレースしかありません。
ブラジルは今年、マイクロマウス大会が始まりました。ブラジルは、もともとあった他のロボット競技等の大会にマイクロマウスが加わった形で開催されたそうで、規模も相当大きそうでした。
国際交流の魅力
海外大会の参加は、単に大会に出るだけでなく、外国旅行を通じて得られる国際感覚を養えることも大きな魅力でしょう。日本だけでなく、各国で競技中、競技が終われば、自然と参加者と技術談義が始まります。語学に難があったとしても、アルゴリズムの工夫や設計思想の違いを知ることで、お互いに大いに刺激を受けます。
特に日本の大会では、参加者同士の交流会やパーティが企画されることもあります。お互いの国の文化や習慣を知ることで、ロボット以外でも交流が深まるとおもっています。
マイクロマウスという技術を通じて得た仲間や知己は一生の宝物です。世界中どこへ行っても「マイクロマウスやロボトレースをやっていました。」と言えば打ち解けられる共通言語を持っていることは、異国に降り立ったとしても、ある種、知っている何かがある安心感を得ることができ、自信となってくれることでしょう。
何より、自国以外を旅することは、異文化理解だけでなく、自分自身にも新たな驚きや経験をもたらしてくれるものです。
そんなきっかけとして、海外のマイクロマウス大会にも参加してみてください。
どこか参加したい、という海外大会があれば遠慮なくお知らせください。
NTFとしても応援します。
海外に行ってみたいという気持ちにはなれないなぁという方も、全日本マイクロマウス大会を単なるロボット競技会と考えるのではなく、大会を通じて様々なバックグラウンドを持ったエンジニア同士の技術交流ができる貴重な場として考えてみてください。
2025年2月に開催される今年度の大会にも海外から参加者が来てくださるはずです。ぜひ国内だけでなく、海外の技術者たちと切磋琢磨しながら、自分自身も世界に通用する技術者を目指して頑張って下さい。