cc@lj[eNmW[Uc@NTF -New Technology Foundation-

つくばチャレンジ

 menu
NTFトップ >つくばチャレンジ >2010レポート >本走行レポート(ファイナル)

石井英男さんによる本走行レポート(ファイナル)



「つくばチャレンジ2010ファイナル走行」レポート
~難易度の高い約1.1Kmのコースを7ティームが完走し、課題を達成!



 つくばチャレンジは、自律型ロボットが実際に人が生活する「実環境」の中で、「安全かつ確実に動く」ことを目指す技術チャレンジである。今回のつくばチャレンジ2010は、4回目の開催であり、11月18日にトライアル走行が、11月19日にファイナル走行が行われた。ここでは、ファイナル走行の様子をレポートする。


●つくばチャレンジで初めてゴールが屋内に


 つくばチャレンジは、ロボット技術を向上させるために行われている技術チャレンジであり、毎年課題の難易度が上がっている。2007年の第1回はほぼ直線のコースだったが、2008年は折り返し地点を回って戻ってくる往復コースになり、2009年では、周回コースになり、路面状況や環境のバリエーションが増えている。今回は、つくばチャレンジで初めて、ゴールが屋内(つくばサイエンス・インフォーメーションセンターの中)に設定されたほか、歩道に出る手前に白線(停止線)が設けられ、そこで一時停止を行い、安全が確認されたのち、再スタートするというルールが新たに定められた。コースも昨年より複雑になり、方向転換をしなければならない場所も増えている。停止線は全部で6カ所あり、それぞれの場所できちんと止まる必要がある。課題の難易度は、昨年よりもかなり高くなったといえる。

 ファイナル走行には、前日行われた約240mのトライアル走行に成功した31ティームと、トライアルのゴールには到達しなかったが、最も惜しかった次点ティームの合計32ティームが出走した。

 開会式ではまず、つくば市の市原健一市長が、「ロボットにかける皆さんの情熱を感じた。つくば市は今、ロボット特区の申請中であり、来年には駅の周りをロボットが自律走行することも可能になるのではないか。つくば市がロボットの街として、ロボット技術の発展に貢献していけると思っている」と挨拶を行った。次に、つくばチャレンジの大会委員長である油田教授が挨拶を行い、「つくばチャレンジは、ロボットを実験走行させて、どんな技術が必要か確認しながら開発を行っていく場だが、それは昨日のトライアル走行まで。今日のファイナル走行は、今さら開発はできないので、お互いの成果を見せ合い、技術に関するディスカッションを行い、今後の研究開発に活かして欲しい。今までの成果が生きることを期待している」と述べた。



最初に市原つくば市長が挨拶を行った


次に大会委員長の油田教授が参加者に伝達事項を伝えた



つくばチャレンジ2010ファイナル走行のゴールは、つくばチャレンジで初めて屋内に設定された。つくばサイエンス・インフォーメーションセンターの入り口の自動ドアを開けて中に入ったところがゴールとなる


●出走順も昨年とは大きく変更


 つくばチャレンジ2010のファイナル走行では、出走順も大きく変更された。昨年までは、トライアル走行のタイムが速かった順に出走していたが、それでは、速いチームほど不利になる(開会式直後の人混みの中でスタートすることになるため)、という問題があった。実際、去年も一昨年も、トライアル走行で一番速かったチームは完走していない。
 そこで今年は、公平性を期すために、出走順をランダムにした。それでも、一番最初に出走するティームは不利になるので、トライアル走行で次点だったティーム(トライアル走行は達成できなかったが、一番ゴールに近かったティーム)が、いわば露払い的な役割で、最初に出走することになった。なお、出走順はランダムとしたが、トライアル走行を最初の走行でクリアした27ティームと第2回目の走行でクリアした5ティームにわけ、まずは、後者の5ティームがランダムで出走し、その後、前者の26ティームがランダムで出走することになった。つまり、後半に出てくるティームのほうが、ファイナルを達成する可能性が高いということだ。また、タイム順ではないので、追い越しが増えることも、今回の出走順変更によって期待できる。なお、2回のチャレンジが可能であったトライアル走行とは異なり、ファイナル走行は1回しか挑戦できない


●ロボット同士の追い越しやすれ違いのシーンも


 最初に走行した芝浦工業大学ロボティクス研究室ティームの「Arl-03」から、8番目に出走した圭司と愉快な仲間たち2010ティームの「El-verde」までは、残念ながらゴールには到達しなかったが、9番目に出走した防衛大学校情報工学科ロボット工学研究室ティームの「Smart Dump IV」が見事にゴールに到達。タイムは21分20秒で、最初の完走ティームとなった。次にゴールしたのは、日立製作所機械研究所ティームの「Sofara-T」で、タイムは最速の20分22秒。先行していた千葉工業大学fuRoアウトドア部ティームの「Papyrus III」と、筑波大学知能ロボット研究室屋外組2010ティームの「ひとつぼ」を途中で追い越しての見事な走行であった。Papyrus IIIは43分46秒で、ひとつぼは30分5秒でゴールに到達した。
 なお、Sofara-Tは、ゴール到達後、Uターンしてスタート地点に戻る回送コースにも挑戦した。ゴールのつくばサイエンス・インフォーメーションセンターから出るところで、ちょうどゴールに向かってきたひとつぼと対面で出くわすことになったのだが、うまく回避して、無事にすれ違いに成功した。両ロボットとも、素晴らしい技術だといえる。



芝浦工業大学ロボティクス研究室ティーム。ロボットは「Arl-03」だ。トライアル走行で次点となり、ファイナル走行では最初に出走することになった



Arl-03のスタートの様子



2番目に出走した千葉工業大学林原研究室βティーム。ロボットは「Auton」



Autonは、260m地点でリタイヤしてしまったが、その後も走行を続けた。美術館前で左にそれたが、またコースに復帰した



防衛大学校情報工学科ロボット工学研究室ティームの「Smart Dump IV」。安定した走行で、速度も速い



順調に走行を続けるSmart Dump IV



ゴール地点近くには、いくつかの停止線が設けられており、その前で必ず一時停止し、安全を確認してから再スタートしなくてはならない



Smart Dump IVがゴール地点近くの折り返しポイントを通過する様子



Smart Dump IVは21分20秒で、見事ゴールに到達。最初の完走ロボットとなった



千葉工業大学fuRoアウトドア部ティームの「Papyrus III」。順調に走行を続けている



日立製作所機会研究所ティームの「Sofara-T」。高速で安定した走行を実現している



Papyrus IIIの後方に、Sofara-Tが迫ってきたところ



Sofara-TがPapyrus IIIを追い抜いていく様子。2台のロボットの速度にはかなりの差がある



Sofara-Tが、ゴールのつくばサイエンス・インフォーメーションセンターの中に入ってきたところ



Sofara-Tのゴールシーン。タイムは20分22秒。Sofara-Tは、このあとUターンして回送コースを進み、スタート地点まで戻っていった



Papyrus IIIが停止線で一時停止している間に、後ろから筑波大学知能ロボット研究室屋外組2010ティームの「ひとつぼ」が追いつき、同じ停止線に並んだところ



ひとつぼのほうが速度が速いので、先にひとつぼをスタートさせることにした



先にゴールしたSofara-Tが回送コースを進むために、つくばサイエンス・インフォーメーションセンターの入り口から出て、ゴールへ向かってきたひとつぼと対向ですれ違ったところ。2台とも見事な回避能力とナビゲーション能力だ。ひとつぼはそのままゴール達成。タイムは30分5秒である



Papyrus IIIが、ゴールのつくばサイエンス・インフォーメーションセンターの入り口に到着したところ。Papyrus IIIも見事完走を果たし、タイムは43分46秒であった


(つづく)
1  2